作品名: せんだいメディアテーク
所在地: 宮城県仙台市
竣工年: 2000年

講師:佐々木睦朗(構造家・法政大学教授)


□Why 佐々木睦朗 ?

今シリーズ最終回の講師として構造家の佐々木睦朗さんをお招きします。
佐々木さんは伊東豊雄さんやSANAA、磯崎新さん、難波和彦さんといった名だたる建築家とのコラボレーションによって数々の建築を生み出してきた世界的な構造家です。佐々木さんの作品には、(コラボレーションする建築家はプロジェクトごとに変われど)どの作品にも通底する作家性のようなものを垣間みることができます。それは決して「造形力」といった感覚的な領域だけでは語り得ません。

佐々木さんの作品の造形はプロジェクトごとに多種多様ですが、言わば自然界の万物に見られるような、その建築固有のあるべき姿として存在しているように思えます。それぞれの建築に、絶妙なプロポーションで構造を与える。合理的で洗練された構造形式が感覚的でコンセプチュアルな造形と混ざり合う。つまり佐々木さんの作品は、説明可能な領域である「合理」と説明不可能性を孕む領域である「造形」が、その領域を分つ事なく渾然一体となり静かに佇むといった感じがします。この領域間を往復する運動能力によって、その建築に固有の「自然のような状態」をつくることが佐々木さんの真骨頂だと思います。

実際、佐々木さんは建築文化1999.6月号(特集『佐々木睦朗/構造のヴィジョン』)の中で、自身を「ミースとガウディを2焦点にもつ楕円軌道上を自由に移動する」となぞらえています。楕円軌道とは2焦点を等角に見据えながらその距離の和が一定である点の軌道を意味しています。ミースとガウディはそれぞれ美と合理という言葉に置き換えてもよいかもしれません。こうした複眼的な態度であることは何も構造家のみに求められるものではないのではないでしょうか。

言うまでもなく、建築は様々な与条件のもとで造られます。コストや立地状況、クライアントの使い勝手や趣味趣向。佐々木さんの作品が持つ「自然のような状態」は、そういった様々な与条件の中で、意匠・構造・設備を問わず目指すべき理想的な状態だと考えると、構造家だけでなく建築に携わる全ての人々の中に、この「領域間を往復する運動能力・複眼的な態度」が浸透したその先にある世界は、きっと今とは違う情景であるような気がします。

今回の講演タイトルは「構造家 40年の歩み」。佐々木さんは木村俊彦構造設計事務所在籍時から、日本を代表する建築家とのコラボレーションを積み重ねてきました。佐々木さんの40年の歩みを概観する事は、この40年の現代建築の歴史を紐解くこととほぼ同義だと言えます。建築家と構造家のそれぞれのクリエイションが混ざり合い、あるいは施工者の熱意やクライアントの思いとも溶け合い、そのどれにも負う事無く渾然一体の造形物が自然に建つ。言わば、お互いの関係性を無意識的に想像することによって平衡を保っている「自然のような状態」です。「誰がために建築は建つか」という問いに明確な答えはありません。シリーズ最終回は、建築が建つために必要な他者への想像力を考えるきっかけになればと思っています。(満田衛資+山口陽登)

□第13回講演タイトル:
構造家 4 0 年の歩み


□日時:
2011年5月21日(土)17:00-19:00(16:30開場)

●略歴
佐々木 睦朗(ささき・むつろう)
 1946年    愛知県に生まれる
 1968年    名古屋大学工学部建築学科卒業
 1970年    名古屋大学大学院工学研究科修士課程修了
 1970〜1979年 木村俊彦構造設計事務所勤務
 1980年    佐々木睦朗構造計画研究所設立
 1998年    博士(工学)取得
 1999〜2004年 名古屋大学大学院工学研究科建築学専攻教授
 2004年〜    法政大学デザイン工学部建築学科教授

●主な受賞
 1991年 松井源吾賞/美和ロック工業玉城工場の構造設計
 2002年 建築業協会賞/せんだいメディアテーク
      日本鋼構造協会賞(業績)/札幌ドームの構造設計
 2003年 日本建築学会賞(作品)/せんだいメディアテーク
 2004年 建築業協会賞/ルイ・ヴィトン表参道ビル
      国際シェル・空間構造学会 TSUBOIPRIZE(論文)
 2006年 建築業協会賞/金沢21世紀美術館
      グッドデザイン賞/ MIKIMOTOGinza2
      日本鋼構造協会 特別賞
 2008年 日本免震構造協会賞(作品)/多摩美術大学附属図書館
      建築業協会賞/瞑想の森市営斎場
 2009年 建築業協会賞/多摩美術大学附属図書館

●主な著書
『住まい学体系086 構造設計の詩法』(住まいの図書館出版局)
『FLUX STRUCTURE』(TOTO出版) ほか

□会場:TOTOテクニカルセンター大阪
大阪市中央区久太郎町3-6-8 御堂筋ダイワビル2F( 地下鉄本町駅9番・12番出口より徒歩4分)
*駐車場は、利用できません。
□定員:80名(当日先着順)
□参加費:一般1000円 学生500円
□問合せ:柳々堂書店 tel.06-6443-0167

□MAP表示

13th archiforum in OSAKA 2010-2011
これまでの講演とレビュー

講師
「講演タイトル」
Review執筆者
01.
中山英之(建築家)
「これまでつくってきたもの」
木村吉成・松本尚子
(木村松本建築設計事務所)
02.
山梨知彦(日建設計)
「BIMは誰のためのツールか?」
倉方俊輔(建築史家・
西日本工業大学准教授)
03.
柳原照弘(デザイナー)
「建築だけではないこと、その考察」
たかぎみ江(ぽむ企画)
04.
佐藤敏宏(エア建築家)
「ことば悦覧@建築スフィアー
 ―ゼロ(0)年代の交流からみえてきた建築と人々―」
牧野研造
(牧野研造建築設計事務所)
05.
吉村靖孝(建築家/ 株式会社吉村靖孝建築設計事務所代表取締役)
「ダブルテンポから中川政七商店まで」
山口陽登(株式会社日本設計)
06.
難波和彦(建築家)
「建築家は住宅で何を考えているのか」
河田剛(とのま一級建築士事務所)
07.
藤村龍至(東洋大学専任講師/藤村龍至建築設計事務所代表)
「批判的工学主義から CITY2.0 まで」
殿井環(殿井環 建築設計)
08.
竹中司(デザインエンジニア/アンズスタジオ代表)
「コンピューテーション・オプティマイゼーション
 ・ファブリケーション」
白須寛規(design SU)
09.
dot architects(建築家)
「超日常」
島田陽(タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所)
10.
佐藤淳(佐藤淳構造設計事務所顧問/東京大学特任准教授)
「多様な素材による多様な形態を並列に見る」
萬田隆(構造家/武庫川女子大学准教授)
11.
三分一博志(建築家)
「地球のディテール/六甲」
畑友洋
(畑友洋建築設計事務所)
12.
石堂威(都市建築編集研究所 代表)
「過去から未来へ ─リアルとフィクション─」
山崎泰寛(建築ジャーナル)
13.

佐々木睦朗( 構造家・法政大学教授)
「構造家 40年の歩み」

満田衛資
(満田衛資構造計画研究所)

 
13th archiforum in OSAKA 2010-2011
誰 が た め に 建 築 は 建 つ か
すべてのひとが共有できる問いを発したい。
 今の日本という社会では、建築は信用されていない。経済原理に流されるまま風景を奪い続ける建物、あるいは慣習に従い無批判に林立する建物など、広い意味での「箱モノ」は後を絶たない。一方で、そのような状況に対して反作用するかのように、全国各地で建築家達による議論が熱を帯び始めている。これらは、建築をとりまく閉塞的状況に対する危機感の表れであり、建築家達は2010年以降の建築の未来を確実に模索し始めている。
 「誰がために建築は建つか」―この問いは建築家あるいは建築設計者のためだけにある問いではない。建築を作るひと(施工者)、建築を発注するひと(建築主)、建築を使うひと(ユーザー)、建築を伝えるひと(メディア)、建築を執り仕切るひと(行政)、建築を学ぶ人(学生)、建築を教える人(教員)、少なくとも建築関係者であれば共有できるはずの問いである。建築関係者にとって不可避な問いを、世代や職域を越えて広く社会に発信してみたい。建築家や建築設計者が個別に議論すべき魅力的なキーワードの一段階前に必要な、核となる普遍的な問いを、建築関係者の無意識に潜在させること。それこそが、2010年以降の建築を考えるための礎になると信じている。
 

コーディネータープロフィール

満田衛資(みつだ・えいすけ)
構造家・満田衛資構造計画研究所代表
1972年京都市生まれ/1997年京都大学工学部建築学科卒業/1999年京都大学大学院工学研究科建築学専攻修了/1999-2006年佐々木睦朗構造計画研究所/2006年満田衛資構造計画研究所設立/2007年大阪成蹊大学非常勤講師/2009年京都精華大学大学院非常勤講師

山口陽登(やまぐち・あきと)
株式会社日本設計
1980年大阪生まれ/2003年大阪市立大学工学部建築学科卒業/2005年同大学大学院修士課程修了/2005年〜株式会社日本設計

□運営スタッフ:今井敬子・柳々堂書店

(以上、文責 満田衛資+山口陽登)
 
アーキフォーラムとは?